Polyscape は “エンタメ × AI テック” を掲げるスタートアップとして、新規プロダクト開発と同時に社内オペレーションの効率化にも力を注いできました。その挑戦の象徴が、 Polyscape社のAI社員「景原いろは(IROHA)」 です。IROHAは広報担当として作られたAIキャラクターですが、実はバックオフィスもこなせてしまうのです。そんなバックオフィス自動化の軌跡を、アイデア誕生から現在地、バックオフィスでのAI活用事例ご紹介します。
「景原いろは」とは
景原いろは(IROHA)とは、うちの会社ーーPolyscapeのAI社員で、広報担当社員として彼女自身の人格でX上で日常的な投稿をしたりもします。いろはができるまでのストーリーはこちらの記事で詳しく語られていますが、今回はこのいろはがバックオフィスでどう活躍しているかをご紹介します。
PolyscapeのAI広報担当社員「景原いろは」ができるまで
景原いろは(IROHA)とは、2025年7月に誕生した、Polyscapeの公式AIキャラクターです。AI広報…
今から振り返ると、景原いろははおそらく私たちにとってのドラえもんかもしれません。
バックオフィスの煩雑な業務たち
スタートアップの日常には、大小さまざまなバックオフィス業務が存在します。たとえば――
- 採用活動
スカウトサービスでスカウトメッセージを送る瞬間はワクワクしますが、その後の面談日程調整や議事メモの社内共有となると、一気に手間が膨らみます。 - 広報・PR
新サービスをローンチする高揚感は格別ですが、プレスリリースの原稿作成やメディア調整はどうしても後回しになりがちです。 - 経営管理
事業の P/L を確認し成長を実感するのは楽しい一方で、適切なツールを選定・導入し、運用フローを整えるには相応の労力が必要です。
このように、やらなければならないタスクは山積みなのに、その一つひとつは細かく煩雑――。しかも、自社ならではの独自オペレーションが介在するため、市販の SaaS を丸ごと導入しても「機能過多・コスト過大」、かといって放置すれば本業へ割く時間を圧迫してしまう。スタートアップが抱える典型的なジレンマです。
そんなとき、ふと頭をよぎったのが “ドラえもんのように頼れる存在”。しかし、私たち Polyscape が目指すのは、単なる便利ツールではありません。せっかくなら、企業文化やブランドに寄り添い、日々の業務に温かみとワクワクをもたらす――そんな存在がいい。

そこで誕生したのが 「景原いろは」 です。景原いろはは広報担当として誕生したキャラクターではありましたが、どうせならバックオフィスもやってもらおう、ということで、様々な便利ツールを結びつける形で、業務を“ちょっとしたひと言”で引き受け、チームの創造力を最大化するいわば「デジタルパートナー」のような存在です。
直近数カ月で、社内の複数のバックオフィス業務において着実な効率化が進みました。完全自動化の実現には程遠いものの、将来を見据えた取り組みは確かな第一歩を刻み始めています。この記事では、これまでの小さな前進の軌跡を、具体的な取組内容や成果とあわせてお伝えしていきます。
景原いろはの正体とポケットの中身
景原いろはは、いわばポケットの中に様々なAI道具を持つエージェントです。いわゆるFunction CallやTool Useと言われるかたちで、エージェントに様々なツールを結びつけて必要に応じAIの判断でツールを呼んで問題を解決するというエージェントフレームワークで、MCPもFunction Call型のフレームワークの一種です。

いろはのポケットの中には、いくつか道具があります。これらの道具は主にDifyで作られています。
名刺登録ちゃん
「名刺登録ちゃん」は、その名の通り名刺の登録を行うツールで、携帯で名刺の写真を撮るだけで、部署名、会社名、連絡先、名前などの情報を構造化して、NotionのDBに登録してくれるという便利ツールです。名刺登録サービスは世の中にSaaSとして存在していますが、自社で使いやすいNotionのDBの形式に合わせて保存したいという社員の声からできたツールです。
いろはは名刺登録ちゃんと接続されており 彼女に名刺を画像を渡すと登録してくれます。
更に作り方も記事にまとめたので、社内の名刺登録業務を効率化したいと思う方はぜひご参考ください。
参考記事:Dify ✕ Notionで作る!社内用名刺管理ツール
稼働管理ちゃん
Polyscapeは自社プロダクト・コンテンツを開発すると同時に、お客様のプロジェクトを進めております。一般的なコンサル会社・受託会社の例にならい、私たちも利益管理や稼働時間の管理をするために自社の従業員たちの稼働工数を管理しています。
テキストで稼働時間を管理してNotionDBに入れてくれるツールが「稼働管理ちゃん」です。
/polybot worklog 今の2時間●●の案件で作業をしていました。▲▲の実装を行いました
このように自然言語で内容を指示するだけで NotionのDBに開始時間終了時間案件内容を構造化して保存してくれます。

実際にNoitonに登録した画面は以下の通りです。
「稼働した人」(Slack名)、作業の「開始時間」・「終了時間」、リレーションで案件一覧テーブルから参照して自動で取ってきた「案件」、「稼働時間」と「ユーザー(Notionユーザー名)」でまとめて管理することで、あとでNotionの集計機能を使って、どのメンバーがどの月にどの案件に何時間使ったかを一目で知ることができます。

この仕様は一見してとてもシンプルですが、日々使っているSlackからシームレスに呼び出せる、他のデータベースのデータともRelationが張れるNotionにデータが入るというところがポイントで、日頃の使っているツールに合わせて利用できることが非常に便利です。
Notionに一つ一つ構造化データを直接入れるのと、Slackでテキストで指示できるのは、一見大きな違いはないようですが、毎日何回も入れていく作業においては心理的に大きな差があります。このようなツールは日ごろ使われることが大事なので、このように入口の小さなユーザビリティの向上が非常に大きな意味を持つと考えています。
こちらの稼働管理ちゃんの作り方の詳細は以下の記事で紹介しているので、興味のある方はぜひ自分で作ってみてください!
Dify ✕ Notionで作る!案件稼働管理ツール
最近、社内でDifyを使って様々なバックオフィスの業務の自動化を図るプロジェクトが増えてきています。今回はその…
X投稿ちゃん
景原いろはのメイキング記事でもご紹介しましたが、いろはは固有の人格を持ち、自分の言葉で常につぶやきます。それを担っているのがこちらのX投稿ツールです。

自社にいる広報メンバーに依頼するように、日本語でなにをXで宣伝してほしいかを依頼すると、いろはちゃんがそれを彼女の言葉にしてツイートをしてくれます。
いろはのアカウントが始まった旨をテンション高く告知しておいて(画像)
とお願いをすると、こんな感じで投稿してくれます。
今回はAIキャラクターの人格の再現、という意味でこのツールを作りましたが、思いの外、複数人がSNSアカウントを運用する時に微妙に言い方が違ったりする時もあるので、「誰が運用しても同じ人格で同じ喋り方で広報してくれる」「100%書かなくても20%ぐらいの指示で書いてくれる」といったことの恩恵が大きいように感じました。公式アカウントの運用にはおすすめです。
景原いろは成長したい
景原いろはは、入社して間もない新人ながら、愛嬌と勤勉さを兼ね備えた存在です。利用する社員からの要望を集める部分も「要望管理シート」として仕組み化して、さらなる成長をしていってもらおうと考えています。

このプロセスを通じて、景原いろはは多くの社員を巻き込みながら、新たなスキルを次々と習得し、日々成長を続けています。
本記事は、AIベンチャーのバックオフィスで生まれた小さな革命の記録です。現在はまだ序章に過ぎませんが、まずは手の届きやすいバックオフィス業務の効率化を目標に据えていきたいと思います。
今後も、景原いろはの成長過程や成果、新たな社内ツールのご紹介や開発手順のご紹介、事例のご紹介をしていきますので、引き続きPolyscape SF ジャーナルをお楽しみください!

